シルクさんの2020年度新規募集が終わりました。1次募集では75頭中62頭が満口となり、残る13頭も1.5次募集を開始したその日のうちに満口になりました。現在の一口馬主人気、そしてシルク人気を物語るような盛況ぶりでした。
年に一度のお祭りもこれでひと段落となり、気持ちの面でも少しずつ落ち着きを取り戻してきました。この機会に改めて、今年仲間入りを果たした出資馬を紹介したいと思います。
ウィルパワーの19
母の父/キングカメハメハ
性別/牝
生年月日/2019年2月1日
生産/白老ファーム
募集総額/3,000万円
一口出資額/60,000円
体髙/144.5cm、胸囲/167.0cm、
管囲/19.0cm、馬体重/411kg(+14kg)
初見 ー、馬体 〇、動画 〇、おうち 〇
中間発表/553口(抽優164口)→ 1,184口(抽優363口)
最終/1,875口(抽優523口)
当選確率 38.2% → 抽選突破
実績ボーダー/3,308,000円
【血統】
①父系
父キンシャサノキセキは豪州産で、生まれ(9/24生)が半年遅いハンデを抱えながらNHKマイルC3着(勝ち馬ロジック)など、早い時期から活躍しました。しかし、その真骨頂は晩年になってからで、6歳秋のスワンS以降は【6-2-1-1】※勝ち星はすべて重賞、7~8歳時には高松宮記念連覇を達成しています。年齢を重ねるごとに強くなり、最晩年にキャリアハイを迎えた異色のスプリンターでした。同世代にはメイショウサムソン、カワカミプリンセス、アドマイヤムーン、マツリダゴッホなどがいます。
その父フジキセキはサンデーサイレンスの初年度産駒。弥生賞を制した後に屈腱炎を発症し、無敗のまま引退しました。幻の三冠馬、なんて呼ばれたりもしました。種牡馬としては、同馬の他にカネヒキリ、イスラボニータ、ストレイトガールなどを輩出しました。
母ケルトシャーン/Keltshaanはグルームダンサー/Groom Dancer(リュパン賞仏GⅠ)の半妹で、アブソルートリー/Absolutely(AJCオークス豪GⅠ)の祖母になりました。その他、ちょっと遠くなりますが、デインドリーム/Danedream(凱旋門賞などGⅠ4勝)、サクラローレル、タイムパラドックスなどが近親になります。
短距離専門だったキンシャサノキセキですが、血統的にはスタミナ色も多分に含まれていて、配合によっては長距離型が誕生してもおかしくはありません。初期の活躍馬は、シュウジ、モンドキャンノ、サクセスエナジーなど父同様に短距離を得意としていましたが、今年になってガロアクリークやルフトシュトロームなど、これまでよりもやや長めの距離に適性を持つ活躍馬も出てきました。種牡馬として円熟期に入ってきたこと、産駒特徴が育成に活かせるようになってきたことなども、適性の幅を広げることに影響してるのかな。芝なら短距離、ダートなら短中距離を基本としながら、今後様々なタイプが出てくるかもしれませんね。コンスタントに活躍馬を輩出している反面、GⅠ勝ち馬はいませんので、もうそろそろ…の期待感もあります。
②母系
母ウィルパワーは現役時代4勝を挙げています。芝・ダートを問わず短距離戦で活躍しました。
その父キングカメハメハは8戦7勝。NHKマイル、ダービーを連勝し『異なる根幹距離でのGⅠ制覇』が当時話題となりました。一方で同馬以外にもクロフネ、タニノギムレットなど、同じ臨戦過程を踏んだ馬の早期引退が続いたことで、成長段階での無理が遠因となったのではないか、なんて物議になった記憶があります。馬優先とはなんなのか、その名誉は誰のためのものなのか…難しいですね。種牡馬となってからはロードカナロア、ルーラーシップ、ドゥラメンテ、ホッコータルマエ、アパパネなどの超大物級を続々と輩出、2010~11年にはリーディングサイアーにも輝きました。惜しくも19年に亡くなりましたが、双璧をなしたディープインパクトとともに一時代を築きました。
母のトキオリアリティーも優秀な繁殖で、リアルインパクト、ネオリアリズムの2頭のGⅠ馬を輩出しました。自身を拠点として、その枝葉を大きく広げつつあります。なにより底力に欠ける印象が強かったメドウレイク/Meadowlakeを、母系に取り入れることで復活させた功績は大きいと思います。
ウィルパワーはそんな母の後継として、インディチャンプ(父ステイゴールド)、アウィルアウェイ(父ジャスタウェイ)と2頭の重賞ウィナーを輩出、牝系の発展に寄与しています。
③まとめ
豊かなスピード能力を色濃く伝える母と、名スプリンターだったキンシャサノキセキの組み合わせには、短距離志向の明確な意図が感じられます。ただ、父がそうであったように、血統的にはスピード一辺倒というわけでもないので、中距離くらいまでこなせる下地はあるんじゃないかな。特に若いうちは、短距離特化と型を決めすぎない方が良さそうです。そういう意味では、インディチャンプでも実績を残しているノーザンファーム&音無厩舎の組み合わせは、とても頼もしく思えます。
【馬体】
なんといっても特徴は体高の144.5cmで、今回の募集馬のなかで最も低い数値です。馬体重も募集当時で397kgしかありませんでした。でも、立ち姿や動画からは非力さを感じません。むしろ力強さやボリューム感といった、数字からくるイメージとは真逆の印象を受けました。ギュッと詰まった塊感は、インディチャンプに通じるものがありますね。
歩いてみると、前肢は肩からしっかりと動かすことができていて、一完歩ごとが力強いです。後肢は繋ぎのクッションが適度に効いていて、バネ(瞬発力)を感じさせます。体を大きく使ってリズミカルな歩く様子には、確かな将来性を感じました。
重心の低さや肉づきの良さなどを考慮すると、将来的には芝・ダート兼用の短距離型に舵を切っていくことになりそう。とはいえあくまでも素人目の推測ですし、若いうちはあれこれ挑戦して可能性を広げてほしいです。
【出資理由】
出資馬インディチャンプの半妹が募集されるわけですから、当然注目してました。でも兄は兄、妹は妹。『思い』とは別に、冷静に判断したいなって思ってました。
そんなこんなでカタログを見たら…やっぱりいい。動画を見たらさらに評価は上昇、他の候補馬と同じフラットな目で見ても、常に1、2番手を争う最有力候補でした。
ちなみに抽優権で最後まで悩んだのはウィルパワーの19とアイリッシュシーの19でした。甲乙つけ難かったのですが、最終的には直感を信じてウィルパワーの19に決めました。一番いいと思った馬に抽優権を使う。テーマに掲げた『チャレンジ』をしっかりと果たせたかなって思います。なので出資理由としては、一番いいと思った馬が、結果的にインディチャンプの妹だった、が正しい順番かな。お兄ちゃんと比べられることも多いだろうけど、そこはあまり気にせずに、すくすく育ってほしいな。
【近況】
2020.08.15 所有馬情報
在厩場所:北海道・白老ファームYearling
白老Yearling担当者「現在は夜間放牧を行いながら、装鞍や背慣らしやシャワーでの体洗いなどの初期馴致を行っています。やや詰まり気味の体型に加えて発達の著しい筋肉はこの牝系ならではと言えるもので、いかにもスピードのありそうな馬体の持ち主です。そのイメージ通り、放牧地での走りを見ると優れたバネが感じられますし、常に群れの先頭を走る姿は頼もしく映ります。性格もオンオフの切り替えが上手な気性の持ち主で、馴致は順調に進められているので、この調子で育成厩舎への移動に備えていきたいと思います」馬体重412kg